苦楽堂通信
インタビュー
2025年8月4日号
『本屋、はじめました』6刷記念 著者インタビュー
著者・辻山良雄さんに訊きました
(文・構成 苦楽堂・石井伸介)

辻山さんの著作『本屋、はじめました』(2017年1月10日初版、2025年8月19日6刷刊行。本体価格1600円)。
東京は荻窪の新刊書店Title店主・辻山良雄さんの著書『本屋、はじめました』、7年ぶりの重版(6刷)を行います。7月末出来、奥付は8月19日(*1)。重版宣伝用に Title さんに久しぶりにおじゃまして辻山さんにインタビューをしました。
※1 8月19日
この日名古屋の「NAgoyaBOOKSENTER」で同店店主・堀江浩彰さんと辻山さんのトークセッション「本屋のたのしみ」が開催されるのです。参加お申込みはこちらから。
https://www.instagram.com/p/DKJ5KM1y30T/
Title さんは来年1月10日で10年目を迎えます。10周年記念イベントがあると聞きました。その予告をしてくださいな。
【辻山】2階の展示会場で、これまでこの店に関わりのあった方に、本のある風景をテーマに絵を描いていただきます。これまで皆さん Title で展示をされているかた。nakaban(*2)さんとか、荒井良二(*3)さんとか、堀川理万子(*4)さんとか、牧野伊三夫(*5)さんとか……。ぜんぶで10人。絵は15枚くらい並ぶ予定です。
※2 nakaban(なかばん)
画家。1974年、広島県生まれ広島県在住。「Title」のロゴマークをつくった人。主な作品に辻山さんとの共著『ことばの生まれる景色』(ナナロク社、2018年刊)、『みずいろのぞう』(ほるぷ出版、2011年刊)、『よるのむこう』(白泉社、2013年刊)、『ぼくとたいようのふね』(BL出版、2018年刊)、『トラタのりんご』(岩波書店、2023年刊)など。
●nakaban × Title exhibition 「ことばの生まれる景色 完結編」 | 本屋 Title
https://www.title-books.com/event/5555
※3 荒井良二(あらい・りょうじ)
絵本作家。1956年山形県生まれ。2005年、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞。主な作品に『たいようオルガン』(偕成社、2008年刊、同年題1回JBBY[日本国際児童図書評議会]賞)、『あさになったので まどをあけますよ』(偕成社、2011年刊、2012年産経児童出版文化賞大賞)、『きょうはそらにまるいつき』(偕成社、2016年刊、2017年日本絵本賞大賞)。
●「はっぴーなっつ」 | 本屋 Title
https://www.title-books.com/event/9909
※4 堀川理万子(ほりかわ・りまこ)
画家、絵本作家、イラストレーター。1965年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒、同大学院修了。主な作品に『ぼくのシチュー、ままのシチュー』(ハッピーオウル社、2005年刊)、『海のアトリエ』(偕成社、2021年刊、同年第31回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞[同賞の絵本での受賞は初。選考者は江國香織]、2022年第53回講談社絵本賞と第71回小学館児童出版文化賞受賞)、『ひみつだけど、話します』(あかね書房、2023年刊、2024年第40回坪田譲治文学賞受賞)など。
●堀川理万子 『海のアトリエ』原画展 | 本屋 Title
https://www.title-books.com/event/8915
※5 牧野伊三夫(まきの・いさお)
画家。美術同人誌「画家のノート・四月と十月」編集長。1964年福岡県北九州市生まれ。多摩美術大学卒。主な作品に『僕は、太陽をのむ』(港の人、2015年刊)、『かぼちゃを塩で煮る』(幻冬舎、2016年刊[2019年に幻冬舎文庫])、『画家のむだ歩き』(中央公論新社、2018年刊)、『アトリエ雑記』(本の雑誌社、2020年刊)など。
●『のみ歩きノート』『へたな旅』刊行記念 牧野伊三夫原画展 | 本屋 Title
https://www.title-books.com/event/13224
まさか「しぶとい十人の絵描き」とかそういうタイトルにはならないですよね。
【辻山】それは考えてなかったです(笑)。ええと……10人の方で15枚、それを1月10日、店を開店して10年経った日から展示して、それと同時に自主制作の記念本も売りはじめます。
この間おっしゃってたやつですね。石橋毅史(*6)さんが辻山さんにインタビューした記事が載るという。その記念本、タイトル決まっているんですか?
【辻山】まだ決まってないです。
本、どれくらいの分量になりますか?
【辻山】それもこれからですね。「この年何がありました」っていうエッセイを書きおろし、あとはその年に起こったことの年表と、その年の「毎日のほん」(*7)や、何が売れたかという「ベスト」を出しながら、これまで関わりがあった方7名に寄稿してもらったり……。わたしや彼女(注・Titleのカフェ運営ご担当のアヤコさん)のインタビューが載ったりとか。あと先ほどの絵は1月から展示をするんですけど、その絵を店内のいろんな箇所に飾り、それを写真に撮って掲載します。あ、あと文章も何本か書きます。
※6 石橋毅史(いしばし・たけふみ)
フリーランスライター。1970年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。出版社勤務を経て98年に新文化通信社入社。出版業界紙「新文化」記者を務める。2005年、同紙編集長就任。09年12月退社。著書に『「本屋」は死なない』(新潮社、2011)、『口笛を吹きながら本を売る──柴田信、最終授業』(晶文社、2015)、『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー、2018)、『本屋がアジアをつなぐ──自由を支える者たち』(ころから、2019)。小社からは2016年に『まっ直ぐに本を売る』を刊行。2024年3月に8年ぶりの重版となった際のインタビューを小社ウエブサイト内「苦楽堂通信」に収録しています(が、ほとんど2人でプロレスの話ばかりしていますごめんなさい)。
●『まっ直ぐに本を売る』三刷記念★著者インタビュー – 出版・編集 苦楽堂
http://kurakudo.co.jp/interview/20240319/
※7 「毎日のほん」
辻山さんが毎日店頭に掲げSNSに投稿しTitleのホームページに載せている本の紹介。
判型って決まってるんですか。
【辻山】これからですね。今月の末にデザイナーの根本匠さんと打ち合わせをするので、そこで決まってくるんじゃないかなと。値段もまだ未定。だいたい500部限定とは思ってますけど、それも印刷費に左右されるので決定ではないですね。書籍未満リトルプレス以上のラフな本というか。
10年目でそれをやろうっていうのは、前から思っていらっしゃったんですか?
【辻山】そうですね。それこそ100年続いてる店もたくさんあるから、10年ぐらいで大げさにするっていうのはちょっと気恥ずかしさもあるんですけど、ひとつには、開店したときから「本をつくります」「本をつくってもいいかもしれません」みたいなことを常に言ってきて、ずっとそれをしてこなかったし、つくるにはいい機会だし、1回ちょっとやってみたかったっていうのはありますね。遊びと言うにはお金がかかりすぎてますが。
辻山さんはお店を始めてから今まで、いろんな本を出してらっしゃるんですけど、それらの本とはどういうふうに違うんですか?
【辻山】これまで出した本は出版社も関わっている話だし、何年後に読んでも大丈夫といった強度でつくっているけど、今度の自主制作の本は、もう少し自由に、自分がこれまでやってきたことを楽しみながらまとめました、みたいな。
なるほど。ではここから《自分がこれまでやってきたこと》のお話を伺います。
辻山良雄(つじやま・よしお)
Title店主。1972年、神戸市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。97年、リブロ入社。大泉店、久留米店、福岡西新店を経て、広島店と名古屋店で店長を歴任。名古屋時代は街ぐるみの本のイベント「BOOKMARK NAGOYA」初代実行委員の一員を務める。2009年より池袋本店マネージャー。15年7月の同店閉店後退社。16年1月、東京・荻窪にTitleを開業。2017年『本屋、はじめました―新刊書店 Title 開業の記録』を小社より刊行。近著に『しぶとい十人の本屋―生きる手ごたえのある仕事をする』(朝日出版社、2024年刊)。他の著作に『小さな声、光る棚 – 新刊書店 Title の日常』(幻冬舎、2021年刊)、『本屋、はじめました(増補版)―新刊書店 Title の冒険』(ちくま文庫、2020年刊)、『ことばの生まれる景色』(nakaban さんとの共著、ナナロク社、2019年)、『365日のほん』(河出書房新社、2017年刊)。